
中川 博勝
大阪事業所
所長
ITコンサルタント
―― 最初に大阪事業所のミッションと事業領域、目標を教えてください
中川 大阪事業所は、クレスコ・ジェイキューブが大阪・関西、さらに西日本へ事業を広げていくための拠点です。2026年度から、大阪事業所として「大阪事業所独自のビジネスモデルを確立し、事業を継続していく」というビジョンを掲げています。現在は本社のプロジェクトや郡山の案件などにも参画していますが、将来的には大阪で仕事を獲得し、大阪のメンバーで開発し、お客様へご提供できる体制をつくっていきたいと考えています。
事業エリアとしては西日本全体を想定しています。ただ、最初から広いエリアをカバーするのではなく、まずは大阪、神戸、京都の3都市を中心に事業基盤をつくることが重要だと考えています。そこで実績を積み重ね、人材や体制が整ってくれば、中国、四国、九州などへも徐々に広げていきたいですね。
―― 大阪事業所は、この1年ほどで急速に組織が大きくなりましたね。
中川 そうですね。1年ほど前は、実質的に私1人でした。それが現在では、営業、開発、コーポレートを合わせて10数名の体制になっています。この秋にはさらに数名がメンバーとして加わります。
開発メンバーはそのうちの大半ですが、経験豊富なメンバーばかりというわけではありません。責任者を中心に、新卒社員やIT業界未経験で中途入社したメンバーを育成しながら組織をつくっているところです。
年齢も私とはかなり歳の離れたメンバーが多いのですが、非常にいい関係ができています。大阪事業所の強みは「団結力とチームワーク力」だと思っています。この雰囲気は、組織がこれから大きくなっても大切にしていきたいと思っています。
―― 現在、事業所として特に取り組んでいることは何でしょうか。
中川 まずは組織としての基盤を固めることです。2026年度下期までにある程度の体制を整え、2027年度には大阪事業所が単独で仕事を獲得し、事業を展開できるようにしたいと考えています。そのためには、営業と開発の両方を強くしていかなければなりません。
開発については、現在の若手メンバーを育成すると同時に、プロジェクトをリードできる経験者も必要です。営業についても同様で、お客様の課題を理解し、自ら提案して案件をつくれる人材を増やしていかなければなりません。
しかし、人数だけを増やせばいいとは考えていません。組織戦略に沿って必要な人材を採用し、若いメンバーを育て、少数でも力のある「精鋭部隊」にしていくことが重要だと思っています。
―― 営業の育成では、どのようなことを重視していますか。
中川 「モノ売り」ではなく、「コト売り」ができる営業を育てることです。言い換えれば、ソリューション営業です。まずお客様の業界や市場を理解し、その会社がどのような経営課題を抱えているのかを考える。さらに、その経営課題を解決するために、営業部門や製造部門など、それぞれの組織にどのような課題があり、ITで何を解決すべきなのかまで掘り下げていく。そこまで理解したうえで、クレスコ・ジェイキューブがもつ製品やサービス、技術を組み合わせてご提案できる営業になってほしいと考えています。
私自身、これまでコンサルタントとしてそうした仕事をしてきましたので、その経験や考え方を大阪事業所のメンバーにも伝えているところです。
―― これまでのコンサルティングの経験は、大阪事業所長としての仕事にも活かされていますか。
中川 非常に活かされていると思います。私は現在もお客様のコンサルティングを行っています。たとえば基幹システムを再構築する場合でも、いきなりシステムの話から入るのではなく、まず会社の経営課題を整理し、DX戦略を考え、その中で必要となるITのテーマを明確にして、お客様と一緒に継続的に実現していきます。
大阪事業所の運営も基本的には同じだと思っています。クレスコ・ジェイキューブの中期経営計画や会社として目指す方向を理解し、それを大阪で実現するには何が必要なのか、どのような課題があるのか、その課題をどう解決するのかを考える。
そういう意味では、これまでコンサルタントとして培ってきた知見やノウハウを、大阪事業所という組織づくりに生かしている感覚があります。自分自身にとっても、これまでの経験をどこまで事業拡大に生かせるのか、非常に楽しみなチャレンジです。
―― 現在までの成果についてはいかがでしょうか。
中川 2026年度上期については、大阪事業所として設定された目標を達成することができました。これは開発メンバーが頑張ってくれた結果だと思っています。現在は複数のプロジェクトが動いており、本社のプロジェクトだけでなく、郡山の仕事やIBM i関連のプロジェクトにもメンバーが参画しています。
一方で、まだ大阪で独自に獲得した仕事だけで事業を成り立たせているわけではありません。今はさまざまなプロジェクトを経験することで、メンバーの技術力やチーム力を高めている段階です。この基盤をしっかりつくったうえで、次の段階では大阪自身が仕事を生み出す組織へ変えていきたいと考えています。
―― 大阪独自のビジネスをつくるうえで、どのような分野に可能性を感じていますか。
中川 大きく2つあると考えています。1つはIBM iです。クレスコ・ジェイキューブにはIBM iに関する多くの技術者とノウハウがあります。これは会社として非常に大きな強みです。
一方、関西を見ると、IBM iを扱っているITベンダーはありますが、比較的小規模な会社が多い。IBM iの既存システムへの対応だけでなく、AIやクラウドなど新しい技術まで含めてご提案していくことを考えると、クレスコ・ジェイキューブの総合力を活かせる余地は大きいと思っています。そのため、大阪にもIBM iの技術者を増やし、IBM iビジネスを1つの柱として立ち上げたいと考えています。
―― もう1つは何でしょうか。
中川 FDE(Forward Deployed Engineer)のような役割を担える人材を育てることです。これからは、単にお客様から要件を聞いてシステムを開発するだけではなく、経営的な視点をもった人材がお客様の中へ深く入り込み、AIなども活用しながら一緒に課題を解決していくことが、ますます求められると思っています。
ITコンサルティングのような上流からお客様をご支援し、そこから具体的なシステムやサービスにつなげていく。そのような人材を大阪で育成できれば、IBM iと並ぶ大阪事業所の大きな武器になると考えています。
―― 中川さん自身も、コンサルティングの現場でAIを活用されているそうですね。
中川 はい。すでに実際のお客様へのコンサルティングで活用しています。たとえば、お客様の業界や市場、企業の状況などを分析し、経営戦略や提案のベースをつくる作業にはAIをかなり活用できます。以前であれば、図書館へ行って資料を探してコピーし、さまざまな情報を集めて整理するところから始めていました。現在は、そうした情報をAIに読み込ませ、分析やアウトプットのベースをつくることができます。これによって、調査や資料作成にかかる労力は大幅に減りました。ただし、AIが出した答えをそのままお客様へ提示すればいいわけではありません。
―― そこでは、やはりコンサルタントとしての経験が重要になるのでしょうか。
中川 そこが非常に重要です。AIを使えば、一見すると非常によくできた資料をつくることができます。しかし、お客様の経営層から「なぜこの結論になったのですか」「どの情報から、この考え方を導いたのですか」と質問されたときに、自分の言葉で説明できなければ、そこで終わってしまいます。
AIが答えを出してくれたから正しい、ではいけません。その背景にある業界や市場、お客様のビジネスを理解し、なぜその結論になるのかを説明できる知識と経験が必要です。AIは非常に強力な道具ですが、それをどう活かすかというノウハウは、人が長年積み重ねてきた経験から生まれるものだと思っています。
―― そうした考え方は、全社にも展開されているのでしょうか。
中川 はい。現在、営業や中堅のSEなどを対象に「ソリューション営業研修」を実施しています。私もアドバイザーとして参加しています。
クレスコ・ジェイキューブは、技術力という面では多くの強みをもっています。そこに、お客様の経営や事業を理解して提案する力が加われば、さらに大きな強みになると思います。AIも活用しながら、単に技術や製品を説明するのではなく、お客様の経営課題から提案できる人材を増やしていきたいですね。
―― コンサルタントの目から見て、この4年間のクレスコ・ジェイキューブをどのように見ていますか。
中川 会社として非常に大きなポテンシャルをもっていると思います。現在のクレスコ・ジェイキューブは、複数の会社が一緒になって現在の規模になっています。それぞれの会社がもっていた技術やお客様、製品、サービスが集まったことで、提供できるものは非常に多くなりました。
一方で、会社の規模が大きくなったからといって、組織の仕組みや仕事の進め方がすぐにその規模に追いつくわけではありません。品質管理、営業活動、組織運営、生産性など、私の目から見て、当社はすでに会社の規模に見合う水準に到達しています。
しかし、当社はさらに大きな事業体を目指していますから、進化すべき余地はまだあると思っています。私自身、以前はもっと規模の大きな会社に勤めていました。その経験から現在のクレスコ・ジェイキューブを見ると、「もっとできる」と感じるところがたくさんあります。
―― 大阪事業所としても、本社との連携が重要になりますね。
中川 非常に重要です。そのため、私は2026年度から、基本的に月1回は東京へ行くようにしています。会社全体としては、どうしても本社を中心にビジネスが動きます。その中で「大阪では今こういう仕事をしている」「これから大阪ではこういう事業をつくりたい」ということを、本社の経営層や各部門の責任者に直接伝え、理解してもらう必要があります。
オンライン会議ももちろん活用しますが、重要なところは実際に顔を合わせて話すことが大切です。全社レベルの大阪戦略会議や地域未来創生会議、営業戦略や事業戦略に関する会議などにも参加し、さまざまな方からアドバイスをいただきながら、大阪の戦略へ反映しています。これも、考えてみればコンサルティングの仕事と非常によく似ています。
―― 今後は、大阪でどのような営業を目指していますか。
中川 将来的には「攻めの営業」を実現したいですね。現在の案件には、IBMやパートナー企業からご紹介いただくものもあります。もちろん、そうした関係は非常に重要です。その一方で、大阪事業所自身がお客様へ働きかけ、課題を見つけ、ご提案して案件をつくる力をもたなければ、本当の意味で大阪独自のビジネスモデルにはならないと思っています。
御用聞き型ではなく、提案型、コンサルタント型の営業です。そのために営業を育成すると同時に、案件を獲得したときに大阪で開発できる体制も整えていく必要があります。若手の育成だけでは時間がかかりますから、即戦力となる中途採用も並行して進め、両方を組み合わせながら組織を強くしていきたいと考えています。
―― パートナー企業との連携については、どのように考えていますか。
中川 非常に重要だと思っています。今年度からIBM i関連のパートナー会や関西のIT企業のコミュニティなどへ積極的に参加しています。
以前の高木システム(2025年に当社に統合)では、ご提供できるものが限られていました。しかし現在はクレスコ・ジェイキューブとして、IBM iをはじめ、旧4社がそれぞれ培ってきたさまざまなソリューションや技術をご提供できます。そうした強みを知っていただき、パートナー企業とお互いに補完しながら仕事を広げていくことも、大阪事業所の重要な戦略の1つです。
―― 関西で事業を拡大するには、マーケティングも重要になりますね。
中川 そうですね。現在、クレスコ・ジェイキューブという会社は、関西ではまだ十分に知られているとは言えません。ですから、まず認知度を高めることが必要です。本社のマーケティング部門とも連携し、関西のイベントへの出展など、さまざまな取り組みを進めています。
ただ、関西には関西ならではの特徴があります。私の感覚では、大阪、関西は「会社」だけでなく「人」で仕事をする傾向が強い地域です。会社としてのブランド認知を高めることはもちろん必要ですが、それだけではありません。イベントやコミュニティへ積極的に参加して顔を出し、人と人との関係をつくり、そこから少しずつビジネスにつなげていく。そうした草の根的な活動も非常に重要だと思っています。
―― 最後に、大阪事業所を今後どのような組織にしていきたいですか。
中川 今後2~3年で、現在よりかなり大きな組織になると考えています。ただ、人数を増やすこと自体が目的ではありません。現在、大阪事業所には非常にいいチームワークがあります。新しい人が入ってきたときにも、その輪の中に自然に入ってもらい、若いメンバー同士が協力しながら仕事を進められる組織にしていきたいと思っています。いつまでも私がすべてを指示する組織ではいけません。私の右腕、左腕となる人材を育て、その次の若い世代が主体となって大阪事業所を動かしていく。それが団結力やチームワークにもつながると思っています。
私はIT業界に入って42年になります。今後は、自分が経験してきたことを若い世代へ伝え、何かいいものを残していくことも自分の役割だと考えています。そして何よりも、深井社長が考えている会社の将来像を理解し、大阪の事業を大きくしていくこと。そのために自分がどこまで貢献できるかが、これからの私にとって一番大きなテーマです。
IBM iという当社の強みを大阪でも確立し、AIやFDE、コンサルティングといった新しい力を組み合わせながら、大阪独自のビジネスモデルをつくっていく。そして大阪・神戸・京都を起点に、将来的には西日本へ事業を広げていきたいと考えています。

