経理業務を担当しているお客様へのお役立ちコラム|第6回 交際費の会計処理 ~会議費・福利厚生費・寄付金との違いを理解する

2025/08/01コラム

松本 直樹

松本直樹税理士事務所 税理士

はじめに

「この支払いは交際費ですか?」

経理部門の日常処理でよく出る質問です。交際費は、法人税法上で損金不算入になる場合があるため、明確な区分と証拠書類の管理が重要です。しかも、「会議費」「福利厚生費」「寄付金」などとの違いもわかりにくく、誤って処理してしまうこともあり得ます。

今回は、税法で定義されている交際費の基本を押さえつつ、実務の見極めポイントを紹介します。

交際費とは(法令定義)

租税特別措置法によると、「交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう」とされています。

実は、交際費の定義に関する条文はほぼこれだけで、あとは通達でカバーされています。従って、この定義条文を完全に理解すれば、交際費を理解できたことになります。

この条文のうち、「交際費、接待費、機密費その他の費用」は、「勘定科目を問わず」と読み替えてください。そして、「その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」は、相手先が「事業関係者」という意味、「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」は、目的が事業関係者との「関係維持のための行為」と読んでください。

まとめると、「交際費とは、勘定科目を問わず、事業関係者に対して、関係維持のために支出するものをいう」となります。

損金不算入のルール

法人税法では、交際費は「原則として」損金になりませんが、資本金により一定の額の損金算入が認められています。

損金算入額の計算は、法人の資本金によって以下の3つのパターンに分けられます。

①資本金が1億円以下の法人は、「年間800万円まで」または「交際費のうち、飲食費の50%」のどちらかを選択した金額が損金算入額になります。実際は、ほぼ800万円定額限度額を使うことが多いです。
②資本金が1億円超100億円以下の法人は、「交際費のうち、飲食費の50%」が損金算入額になります。
③資本金が100億円超の法人は、交際費の額すべてが損金不算入になります。

なお、①②に該当する法人でも、グループ法人だとそれぞれ②や③の扱いになる場合があります。

「飲食費」とほかの勘定科目との関係

交際費では、「飲食費」をよく理解する必要があります。まず金額基準だと、1人あたり1万円以下の飲食費は、接待目的であっても交際費ではなく、会議費などで処理して構いません。

このルールは令和6年税制改正で、5000円から1万円に改正されました。ただし、交際費から除く代わりに、飲食を行った店と参加者などはしっかり記録しておく必要があります。

記録は、領収書の裏面に記載しておくのも有効です。なお、1万円の判定は消費税の経理処理によりますので、原則課税の場合は税抜経理が有利になります。

また、社内行事の忘年会や新年会、創立記念パーティーなどに取引先や従業員家族が参加した場合は、従業員の分は福利厚生費、取引先や従業員家族の分は交際費として処理します。

それでは、忘年会や新年会などで従業員1人あたり1万円を超える支出があった場合は、どのような処理が必要でしょうか。

この場合は明確な金額基準はありませんが、社内の誰でも参加できて、あまりにも高額でなければ、全額福利厚生費で構わないとされています。

寄付金と交際費の違い

寄付金と交際費の区別は、交際費の基本的な定義を理解できていれば迷いません。交際費は「事業関係者に対する関係維持のための支出」ですので、見返りを期待していない支出ならば寄付金になります。たとえば、赤十字や被災地に対する支出は典型的な寄付金です。

それでは、社長の出身校に対する寄付金はどうでしょうか。

この場合は、法人が支出する合理性がなければ、寄付金ではなく、社長に対する経済的利益(役員賞与)になる可能性があります。経理担当者は、自社の支払いに対して背景も注意する必要があります。

まとめ

交際費税務は、範囲も広く、支出した事実だけでなく、支出した理由も問われるため、経理部門としては悩ましい分野です。場合によっては、会計上の「交際費」をできるだけ避けて、「会議費」「福利厚生費」「寄付金」「旅費交通費」として処理し、申告書別表で「交際費」とする法人も見受けられます。社内コミュニケーションを活発にして、経理部門に過度な責任が集中しないようにするべきと考えます。


松本 直樹

松本直樹税理士事務所 税理士
https://minnadekomon.jp/

石川県金沢市生まれ
金沢大学法文学部経済学科卒業
卒業後、証券会社で債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
証券会社を退職後、税理士事務所勤務
1997年 税理士試験合格
1999年 松本直樹税理士事務所として独立開業
2006年 株式会社ケーエムエスを設立
2014年 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年 合同会社「みんなで顧問」設立
2023年 マンガ本「みんなの相続」出版
2024年 一般社団法人みんなで顧問設立

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