
木島 康行
第1事業本部
本部長
―― 当社は2026年4月に事業本部制へ移行し、全社的な組織改革を進めています。この組織改革は、どのような背景や課題意識から生まれたのでしょうか。
木島 近年、社員数が300名を超え、事業規模が拡大する中で、従来のようにトップの判断に依存する体制では、意思決定のスピードが事業成長に追随できなくなってきました。このままでは、お客様への価値提供のスピードにも影響が出かねない。そうした危機感が背景にあります。だからこそ、権限を現場に近いレイヤーへ委譲し、より迅速に判断・行動できる組織へと変えていく必要があると考えています。
私が所属していた旧アルスも、もともとは50名規模の組織でした。しかし、その後100名、200名と急速に拡大する中で、「これまでのやり方では組織が回らない」という壁に何度も直面してきました。今回の組織改革も、そうした成長過程で見えてきた課題に対応するための取り組みだと捉えています。
―― その変革は、どのように進めているのでしょうか。
木島 現在は、まさに“マインドの移行期間”にあると考えています。これまでは、トップが事業方針を提示し、現場がそれを実行するトップダウン型の運営が中心でした。
しかしこれからは、「課長は部長の視点で考える」「部長は本部長の視点で考える」といったように、一段上の視座を持ちながら、主体的に判断できる組織へと転換していく必要があります。これにより、現場起点でスピーディに意思決定を行える体制を目指しています。
その取り組みの1つとして、第1事業本部では週1回の事業部会に課長以上が参加する体制を取っています。トップダウン型の組織から、少しずつボトムアップ型の組織へ移行していく。そのためには、まずマネジメント層の意識改革から始める必要があると考えています。
―― 実際に、変化は見えていますか。
木島 はい。少しずつですが、変化は出てきていると感じています。毎回テーマを設けて会議を行っており、たとえば「あなたの後継者は誰ですか?」というアンケートを実施したこともあります。すると、「この人を次のリーダー候補として見ているのだな」という考えが見えてくるのです。こうした取り組みを通じて、組織全体で人材育成への意識が高まりつつあります。
最近では、「マンダラチャート(課題を多面的に整理し、具体的な施策まで分解するフレームワーク)」も活用しています。中央に「売上予算達成」といったテーマを置き、その周囲に課題を書き出していく。さらに課題を細分化しながら、具体的な改善策まで落とし込んでいく取り組みです。
課題の捉え方も、解決方法も、人によって異なります。だからこそ、メンバー同士で議論を重ねることで、多面的に考える力や、自ら課題を解決する力を高めていきたいと考えています。
―― 木島さんが率いる第1事業本部は、どのような組織ですか。
木島 大きくは、2つの事業で構成されています。1つはIBM iを中心とした基幹システムおよび自社パッケージ「TREE(販売管理システム)」などを扱う第1事業部、もう1つはSIと先進技術領域を担当する第2事業部です。この2つは、一見すると対極的な領域に見えるかもしれません。しかし私は、この融合に大きな可能性があると考えています。
たとえばTREEのお客様は、基幹系システムだけでなく、さまざまなシステム化ニーズをお持ちです。AI活用やスマートフォン対応、クラウド連携、システム統合など、周辺領域への期待も年々高まっています。
だからこそ、基幹システム(IBM iやTREE)への深い理解と先進技術を組み合わせることで、既存資産を活かしながらお客様の事業価値を高めるモダナイゼーションを実現できると考えています。これが当社の大きな強みです。
―― 第2事業部では、AI活用を積極的に推進されているそうですね。
木島 はい。第2事業部では、「AIを使えない人はいない」状態を目指して取り組んでいます。GitHub CopilotやMicrosoft 365 Copilot、Claudeも、昨年から現場への導入を進めてきました。背景には、「AIを誰もが使いこなせるようにならなければ、市場競争で優位に立てない」という強い問題意識があります。AI推進リーダーが、早い段階から現場展開を主導してくれました。
AIは、今後間違いなくデファクトスタンダードになっていく技術です。だからこそ、できるだけ早い段階で、社員一人ひとりが実務で使いこなせる状態を実現したいと考えています。
―― 具体的には、どのようにAIを活用しているのでしょうか。
木島 最近開発したものの1つが「設計書レビューAI」です。これまで私がレビューで指摘してきた内容を学習させ、いわば“仮想木島”を作りました。設計書を読み込ませると、「主語を明確にしましょう」といった、私がふだん重視している観点を自動でフィードバックします。これによりレビューの属人性を抑えつつ、若手でも一定水準のセルフチェックが可能になり、レビュー品質の底上げと工数削減の両立を狙っています。
―― それは、誰が開発したのですか。
木島 入社3年目の若手社員です。新しいことに積極的なメンバーで、そこにAI推進リーダーがブラッシュアップを加え、短期間で実用レベルまで仕上がりました。こうした新しい技術に対してアンテナを高く持てる人と、そうでない人との差は、今後ますます広がっていくと思っています。
―― 4月のキックオフでは、印象的なメッセージを掲げられたそうですね。
木島 はい。「AIに追われず、AIを使いこなすために、昨日の自分を超えよう!」というスローガンを掲げました。私はこの業界20に年以上いますが、昨年から今年にかけての変化のスピードは、これまでにないほど大きいと感じています。このトレンドに乗り遅れると、SEという仕事そのものの在り方が大きく変わってしまう。そんな危機感も持っています。
だからこそ大切なのは、「昨日より今日、何か新しいことが1つできるようになった」という小さな積み重ねです。日々の継続的な成長こそが、これからの時代に求められる力だと考えています。
―― 現在、外部の経営セミナーにも参加されているそうですね。
木島 はい。内容は、マーケティングやロジカルシンキングなどをケーススタディ形式で学ぶものです。
たとえば、「なぜ競合に逆転されたのか」といったテーマを通じて、「誰に、どのような価値を提供するのか」を徹底的に考えます。これはお客様への価値提供を考えるうえでも非常に重要な視点です。
一方で、学べば学ぶほど、「会社として、まだ十分に取り組めていないことが多くある」と実感します。だからこそ、経営や事業の見方をさらに広げながら、現場にも還元していきたいと思っています。
―― 最後に、今後のテーマについて教えてください。
木島 一番大きなテーマは、「人」だと考えています。組織として成長していくためには、経営層や上の人間だけが頑張っていても限界があります。部長、課長、若手社員、それぞれが今より一段高い視座を持ち、自ら考えて行動できる組織にならなければいけません。
そして何より、社員一人ひとりに「会社は誰かのものではなく、自分たちの会社なんだ」という当事者意識を持ってほしいと思っています。その意識の変革こそが、今後の成長の基盤になると考えています。

